入行2年目
さて、銀行員のリアル①で銀行に入行した夫。そして、今でいうパワハラに悩まされ、弱ってしまったものの、ラッキー異動になった夫の銀行員生活の続きを書いていきたいと思います。
2支店目はDランクの支店。中の上くらいの支店規模です。ある市(以下、H市(仮))で融資課に配属されました。そこでは、いままでのようないじめをしてくるような先輩方もいなく、みるみる業務を覚えることができ、幸せな日々を送っていました。
しかし、そんな幸せは長くは続かなったのです…。
H支店の融資課に配属されて半年、営業に出されました。H支店はもちろんH市は営業エリアであり、他にも付随した小さな市、と小さな町、県境ってこともあり、他県も支店のエリアでした。夫はH市全体の渉外担当になったそうです。
そこで前任の先輩に取引先の引継ぎを1週間で行い、いざ、1渉外担当として営業活動をし始めました。銀行員の引継ぎって1週間だけしかないらしいです。あとは引継書見てね的なスタンス。
営業初日、夫は思ったそうです。
「なにからやればいいんだろう。」
たしかに先輩から取引先の社長を紹介してもらって、引継ぎ案件はあるものの、自分からなにをどう営業してよいのかは教わっておりません。なんなら、前の支店で窓口業務を習っていないので、集金すらできなかったそうです。
銀行って凄いですよね。営業の仕方を教えないで、「とりあえず何か取ってこい!」と外に出されるわけですから。新人とは言えど、取引先からしたら担当の銀行員だし、私には無理です。
銀行員のノルマ
銀行のノルマもたくさんあります。営業課である夫の主なノルマはこんな感じ。
・法人貸出金
銀行は貸し出した金利で利益を得ているので、会社に融資してお金を貸し出さなければなりません。その取引額のノルマがあります。
さらに法人貸付金を分類してそれぞれノルマがいくら…と決められます。
融資には大まかに「プロパー融資」「保証協会融資」とあり、「プロパー融資」は銀行が直接信用のある企業にお金を貸す融資です。よって、企業が潰れたら、債権回収ができなくなり、とりっぱぐれます。よって、業績の良い会社にしかこのプロパー取引はできません。プロパー融資は金利が低いです。この金利は企業の決算書を3期分貰って「格付」をし、金利交渉をします。
「保証協会融資」は「プロパー融資」できる企業とは逆に信用があまりないので、いわゆる保証協会という担保を付けた融資です。企業が潰れても保証協会が保証してくれるので銀行としてのリスクは0です。なので、銀行としては「保証協会融資」を優先したいですが、いかんせんこの低金利の世の中で金利が高いです。かつ、保証協会融資は金利が定められているので、どの金融機関でも同じ金利になります。
今は低金利時代で競合もたくさんいるので、保証協会融資は中々案件として発生ないそうです。しかしながら銀行員生活で夫は保証協会融資の支店内担当になることが多かったとか。
・個人貸出金
個人貸出金は「住宅ローン」「マイカーローン」「教育ローン」「カードローン」…とたくさんありますが、渉外担当につくノルマは基本「住宅ローン」です。
この住宅ローン融資案件を見つける方法は二つあります。
①取引先の社長の住宅ローンの新規・借換。社長の紹介による新規・借換。
これは親交を深めている社長さんの自宅を他の銀行から借換ちゃおうって提案します。返済予定表をもらって、試算することで、いくらお得になりますよと伝えられるので、結構うまくいきます。
ただ、社長さんは会社社員ではなく、代表取締役(株主)なので、個人事業主扱いです。個人事業主は私含めた一般の人が使うような住宅ローンのパッケージ商品は使えないので、会社の業績によっては断る可能性もあるのが難点です。
②その辺の家をアポなしでピンポン→「住宅ローンの借換はいかがでしょうか。」っている営業。
登記簿謄本はネット上で購入することができるので、固定金利が終わりそうなタイミングの自宅を見つけて、アポなし突撃。このブログを見て頂いている人の中にもいきなり銀行員が自宅にきた。という経験を持っている人もいるでしょう。それです。
夫は銀行員生活の営業の中でアポなし個人宅訪問が一番きついって言ってました。それはそうですよね。知らない人がいきなりきたら、普通の人は営業話聞かないで「いりません」っていいますもんね。インターフォン越しで断られるのがきつかったと言ってました。
・新規取引先開拓
現在の既存取引先の社長先以外の会社に突撃して、新規で取引を開始することです。
支店は半年ごとに同ランクの支店と点数を競い合って勝負をします。最下位の支店はペナルティがあるので、みんな必死です。この中で、既存の取引先(融資先)をなくしてもダメだし、なくしたなら、新規開拓しなければならない。というか半年で〇件追加とノルマで課せられるので、これもつらいです。
ただ、夫は新規取引開拓が一番好きと言っていました。理由は「既存の取引先だと、〇〇銀行と取引する中での今年の営業は夫君」だけど、新規取引先だと「〇〇銀行の夫君」で、新規で取引した営業のことは大体社長は覚えてくれてる。なぜなら、銀行がよかったのもあるけど、営業が気に入ったから取引しよう。」ってなる社長さんが大半だから。「だから、社長さんのところには都度行って何もなくても親交を図ることが重要なんだ。」って学んだよ。とのことでした。これは銀行以外でも営業さんなら同じですよね。
逆に前任の担当者が新規開拓した取引先は前任の影が残っているからやりづらいそうです。
・預かり資産
預かり資産とは、預金のことかな?って私は思っていましたが、違うみたいです。投資信託や保険商品を売った時の販売手数料のことだそうです。今は定期預金をしてもらっても銀行員はうれしくありません。
銀行も証券外務員や保険外交員の資格をもっていれば(必ず1年目で取らされる)個人のお客様に販売できるので、売っています。この超低金利だけでは銀行やっていけないので、こういうことに手を出しているわけですね。
販売するには商品を勉強しなければならない、ではどう売るのか。
「支店で取引を見て、多額を現金で預けてくれている人に利回りがいいですよ…!相続税対策しませんか…?」と営業をかけるようです。そのやり方は多種多様。電話でアポ取りしたり、突撃したり…。
外貨建ての保険商品は販売手数料も高く、良く相場が分かっていない人にも売りつける営業がいるようで、おじいちゃんおばあちゃんをだましているみたいでいやだと言っていましたね。渉外担当だと大体1,000万くらいのロットからやる気がでる、逆に100万円くらいだと当初だと販売手数料も投資信託だと1.0~2.0%、保険は2.0~7.0%くらいなので大した手数料にもならないので、やる気は出ないし、そもそも狙わない、時間が無駄とのことでした。100万円って庶民からしたら結構金額は大きいのに、銀行員を経験すると感覚も狂うのでしょうか。夫の銀行時代は融資金等は振込なのではしてないと言っていましたが、現金で渡す昔は普通に現金を蹴っ飛ばしたりしてたみたいですね。
ただ、キャンペーンで「この商品を売ってこい!!」という支店長もいるようで…なんか考えさせられますよね。
この話を聞いて、私は投信は証券会社から、保険は保険会社から購入すべきと思います。それぞれ考え方はあると思いますが。それぞれのプロですから。
「銀行員は信用できる」なんて嘘。夫曰く、ノルマのために大きい手数料狙っている営業しかいないので、絶対買ってはダメと。
まあ、すべての銀行員がそういうわけでもないと思いますが、変な商品を買ってしまう可能性が多く、金融庁も警鐘してますからね。みなさん気を付けましょう。
・その他メイン取引
「メイン取引」とは給料振込指定機関にしてもらうとか、分かりやすい例でいえば、法人でのクレジットカード取引。これも意味がわからないと夫は言っていました。使わないカードなのに、「社長、半年だけでいいから付き合ってください!」とお願い営業をせざるを得ない営業。社長さんは人情深い人もいるので、カードを契約してくれる人もいるそうです。でもそのカードはもちろん企業でプラチナカードなので年間万単位かかります。
誰得なんでしょうね?笑
これってお客様のためにもなっていないし…。
ノルマって誰が決めるの?
支店ごとにノルマを本部が決めます→それを支店長に伝えられます→担当者の技量・取引先の規模で大体営業課長が分けるそうです。
時にはノルマを振り分ける人の機嫌が悪いと膨大で達成困難なノルマを課せられることがあるそうです。だから、ノルマが決められる期初はみんなビクビクしてるそうですよ笑
新人営業として
さて、銀行員といえばノルマの説明もある程度させてもらいました。
まず営業出たての夫は会社の社長さんに改めて挨拶をしに行ったそうです。親交を図ろうとしたわけですね。でも、親交を図ったとして、案件がすぐに出てくるわけもないし、メイン銀行でもない会社は案件があったとしても、話してきません。
2週間は特段成果もなく、営業課長に「そろそろパトロールやめて、なにかしらの成績を残してこい。」と言われました。焦りました。
直属の係長にアドバイスをもらい(係長は営業のノウハウを教えてくれた大恩人です。)融資案件にとりつくことが出来ました。
融資案件を取ってきて終わりではないです。銀行は「この会社に〇〇万円貸したいです」という稟議書を作成します。貸出理由、会社の決算状況、今後取引をすることによるメリット等書いて支店長(場合によっては融資部)の決裁をもらったら契約書を作成します。
契約書をもらい、融資実行です。この時の喜びというか安堵感は忘れられないと言っていました。
契約書の訂正があって、何度も社長さんのところへ行き、ご迷惑をかけてしまいましたが…。
そんなこんなで融資課・営業課で各半年が過ぎ、1年が過ぎました。このあとに営業課としての銀行員の記事を書きます。とにかく、新人としての最初の半年間はお試しみたいなもので、本当にだめな新人はここで融資課に回されます。
なんとなくですが、支店内のパワーバランスは
営業課>>>>>融資課>>>>>窓口課
のような支店に回ることが多かったそうです。夫がいつも言っていますが、夫としては「会社内で一番偉いのは営業だと思う。営業が仕事取ってこなければ、事務屋は仕事が無いわけだし。」と。
営業と内部のバチバチってどこもあるんですね…。私は内部事務側なので、「営業のやつ、雑な仕事ばかり取ってきやがって。無理するのはこちらだぞ!!」って思っていますが。
そして支店長が異動となりました。
新しく来た支店長が夫の銀行員人生を変えます。
【2023.8.15 記事作成】
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